心疾患、脳卒中、腎結石、骨粗しょう症、胃がん……重大な病気を招く原因にもなる「塩分」。世界で推奨されている1日あたりの塩分量が5グラムなのに対し、日本の平均的なビジネスパーソンは、ゆうに15グラムを超えるそうです。東京慈恵会医科大学附属病院栄養部の監修による『はじめての減塩』は、美味しく、簡単に塩分を減らすための知恵と工夫が満載の一冊。その中から、ぜひ覚えておきたい基礎知識をいくつかご紹介します。
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塩は「つける」より「かける」
ここからは、主要な調味料とその摂り方のポイントをお話ししていきましょう。
最初に取りあげるのは、塩分そのものである「塩」です。スーパーに行くと、単に「食塩」と書かれたものから粗塩、天日塩、岩塩などいろいろな種類が並んでいます。塩の違いによって、塩分は変わるのでしょうか。
厳密に言うと若干の差はありますが、それほど気にする必要はないでしょう。塩分の多寡よりはむしろ、味わいの違いのほうが大きいでしょう。
一般に食塩と呼ばれるものは、海水から不純物を電気分解によって取り除き、精製したものです。一方、天日乾燥でつくられる天日塩や、かつて海だったところの塩分が結晶化してできた岩塩などの精製されていない塩は、マグネシウムやカリウムなどナトリウム以外のミネラルが含まれるため、複雑な味わいがして、使う量を減らしても満足度が高いものもあります。なお、粗塩は精製されていない、ミネラルを含んだ塩という意味で広く使われていますが、とくに定義された言葉ではないので、単に粒が粗いだけの塩を呼ぶこともあります。
ただ先ほど述べたように、天日塩にしろ岩塩にしろ、塩分に大きな差があるわけではないので、どの塩にしても使いすぎないに越したことはありません。
塩の種類よりも気をつけてほしいポイントが2つあります。1つは、塩の入っている容器です。
外食先で1度や2度、こんな経験をしたことはないでしょうか。卓上に置いてある塩入れを、家にあるものと同じ要領でふったら、思った以上に穴が大きくてドバッと塩が入り、しょっぱくなってしまった……。よくある失敗談です。
容器の穴が大きかったり穴の数が多ければ、その分、1回ふって出る塩の量も多くなります。それでいうと粗塩など粒の大きい塩の場合、容器の穴も大きくなり、ひとふりの量も多くなりがちです。どんなにほかのミネラルが豊富に含まれていようと、たくさん入ってしまえば塩分の摂りすぎに変わりはありません。
最近はガーリックやハーブ、スパイスなどで風味をプラスしたフレーバー塩も人気です。このような塩は、使う量が同じなら塩分は間違いなく少なくて済みます。ただ、これもまた容器が問題です。市販の瓶に入っているものを入れ替えずにそのまま使う場合、その穴が大きく開いていないか、ひとふりで塩が出すぎていないか、確認してみましょう。
そしてもう1つ、気をつけたいのがつけ方です。
昨今、焼いたお肉や天ぷらなどをこだわりの塩で食べさせるお店が増えています。そんなとき、あなたはどうやって塩をつけていますか。小皿やお皿の隅に盛ってある塩に、ちょんちょんとつけて食べていませんか。
そうしている人は要注意。ふれたところ一面にべたっと塩がついてしまうからです。しかも全体に塩味が行きわたっていないために、一口食べてはまたつけて、というのを繰り返すはずです。そうすると、どんどん塩分が増えていってしまいます。
ではどうすればいいかというと、指でつまんでパラパラと上からかけること。そうすれば、少ない量でまんべんなく塩味がつけられます。塩は「つける」より「かける」と覚えましょう。
しょうゆは「かける」より「つける」
塩の次に使い方に気をつけたいのが、しょうゆです。
さて、ここでいきなり質問ですが、淡口(うすくち)しょうゆと濃口しょうゆ、どちらが塩分は少ないでしょうか。
「淡口というからにはこっちのほうが、味が薄いんだろう」と思った人はハズレです。正解は濃口しょうゆです。
濃口しょうゆはもっとも一般的なもので、単に「しょうゆ」とレシピにあったら、これを指します。一方、淡口しょうゆは、関西などでよく使われる色の薄いしょうゆです。小さじ1杯の塩分は、淡口しょうゆで1.0グラム、濃口しょうゆで0.9グラムです。
先のように「淡口」を「味が薄い」と勘違いしている人がけっこういますが、淡口はただ色が薄いという意味。煮物などに色をつけたくないときに琥珀色の白しょうゆを使うことがありますが、この小さじ1杯の塩分は、濃口しょうゆと同じ0.9グラム。とろりとして濃厚なたまりしょうゆは、0.8グラム。色の濃い、薄いは、塩分とはまったく関係ないということです。
では、しょうゆを使う際にはどんなことに気をつけたらいいでしょうか。
しょうゆも、塩と同じく「うっかり摂りすぎ」に注意です。むしろしょうゆのほうが液体であるだけに、ドボドボと一気に出すぎてしまう危険性は高いかもしれません。
しょうゆを使うときのコツは「かける」より「つける」。塩とは逆です。
お刺身に、上からしょうゆをかけると、ついドボドボとかけすぎてしまうことがあります。かけずに小皿にあらかじめ少量とり、そこにちょんちょんとお刺身をつけます。そうすれば、かけるよりもずっと少ない量のしょうゆで済みます。もちろん、お刺身を小皿のなかで泳がせてしまっては意味がありませんので、そこはあくまで「ちょんちょん」を心がけてください。
自宅の場合、プッシュ式のしょうゆさしを使うのもおすすめです。量を微調整しながら出すことができるので、うっかりかけすぎてしまうのを防ぐことができます。